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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第8主日

《A年》
 9 荒れ地のかわき果てた土のように
【解説】
 詩編62は神への信頼を告白する詩編で、他のどのようなものも当てにならないことを述べ、神にのみ信頼を寄せる
ように促しています。2-3節と6-7節は、ほぼ同じ内容で、神へのゆるぎない信頼を歌っています。
 答唱句では、旋律、伴奏ともに音階の順次進行や半音階を多く用いています。これによって、荒涼とした荒れ地の
様子が表されています。とりわけ「土のように」では、バスが最低音になり、荒れ地の悲惨さを強調します。後半は、
「かみよ」で、旋律が四度跳躍して、神を慕う信頼のこころ、神へのあこがれを強めます。なお、『混声合唱』版の修正
では、「あなたを」のバスの付点四分音符は、C(『混声合唱』版の実音ではD)となります。
 詩編唱は、ドミナント(支配音=属音)のGを中心にして唱えられます。どの節でも一番強調されることが多い、3小
節目では、最高音Cが用いられています。4小節目の最後の和音は、F(ファ)-C(ド)-G(ソ)という「雅楽的な響
き」が用いられていますが、バスが、答唱句の冒頭のE(ミ)への導音となり、その他は、同じ音で答唱句へとつなが
ります。
【祈りの注意】
 答唱句、特に前半は、荒涼とした荒れ地の様子を順次進行や、特に半音階で表しています。レガート=滑らかに歌
いましょう。「あれちのかわきはてたつちのように」で、太字の母音「A」は喉音のように、赤字の子音はかなり強く発
音します。また「あれち」は、sf =一瞬強くし、すぐに、弱くします。このようにすることで、荒涼とした荒れ地の陰惨
さを、祈りに込めることが、また、この答唱句の祈りを、よりよく表現できるのではないでしょうか。前半は、「~のよう
に」と答唱句全体では従属文ですから、「れ」以外 p で歌います。和音も従属文から主文へと続くように、五の和音
となっています。
 後半は、この答唱句の主題です。「かみよ」の四度の跳躍で、「か」の部分は、その前の和音の続きで五の9の根
音省略形、「みよ」はどちらも主和音で力強さが込められ、p から、一気にcresc. して、神への憧れを強めます。そ
の後は、f ないしmf のまま終わりますが、強いながらも、神の恵み、救いによって「豊かに満たされた」こころで、穏
やかに終わりたいところです。
 第一朗読のイザヤの預言では、自分が神から忘れられたものであると思っている、シオン(イスラエルの民)に、神
は、「わたしがあなたを忘れることは決してない」(49:15)と断言します。その、神のいつくしみ深いはからいに対し
て、すべてをゆだねる決意を詩編唱によって、黙想します。福音朗読でも、日々の煩いに対して、思い悩まないように
と、キリストは忠告します。わたしたちは、本来、すべてを、そして、すべてのよいものを神からいただいているのです
が、どうしても、それに完全に信頼して生きることが難しいようです。それゆえに、お金、冨、地位、名誉があって、初
めて安心し、次に、神さまが来ている、ということがないでしょうか。少しでも、詩編作者のように、神に「すべてをゆだ
ねる」決意をもって、日々、歩んでゆきたいものです。
 【オルガン】
 答唱句のことばからしても、フルート系のストップが妥当でしょう。基本的には8’だけ、会衆が多ければ、答唱句で
は、Swell の8’もコッペル(カプラー)でつなげて弾くと良いでしょう。パイプオルガンでは、「あれち」の sf を表現す
ることは難しいですが(ペダルを使っている場合も同様です)、ペダルがないハルモニウム(リード・オルガン、足踏み
オルガン)では、表現することができます。
 手鍵盤だけで弾く場合、答唱句は、すばやい持ち替えや、手を滑らすなどの、熟練を要します。じっくりと、考えて、
時間をかけて練習しましょう。このような練習は、会衆の祈りが、この答唱句の信仰告白にふさわしくなるように、す
るためです。会衆が良く祈るためには、オルガンがよく祈らなければなりません。オルガンがよく祈るには、オルガン
奏者が深く祈っていなければならないことを忘れないようにしましょう。




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